イヤー!ようやくオープンしました。FINCAの専用ショッピングサイト。おそらく、国産オリジナルフレグランスの専門サイトって今のところほとんど無いんじゃないでしょうか・・。この場を借りてご尽力&ご協力頂いた関係各位の方々には本当に感謝いたします。そして、FINCAのカオリをこよなくご愛用して頂いているユーザーの方々にはVERY SPECIAL THANKSです。まったく無名のFINCAフレグランスがここまで来られたの何はともあれ、ひとえにユーザー様のお陰であります。私たちの理念のひとつである「お客様と一緒に育つ」という事が少しずつですが、実践されているようでとてもうれしく想います・・・。というわけで記念すべき「香楽夢 VOL.1」は「メシの食える香りビジネス」へ・・・香水の特殊性というテーマで幕を開ける次第であります。

 「メシの食える香りビジネス」というのは逆説的に云うとカオリでメシが食えるのか!・・・という事でもあるのですが・・・結論から云うと食える場合と食えない場合があるという事になるでしょう。筆者独自の表現で恐縮ですが香りの仕事の起・承・転・結は「漁師」さんの仕事に通じるものがあると想います。と云いますのは、漁師さんは魚を捕って生計をたてているわけですが、一度や二度の大漁では生計が維持出来ません。継続的に魚を捕らなければならないのです。かといって時化(シケ)の時には漁に出られず、漁に出てもボウズの時もあります。入念な準備と最新鋭の設備船。培ったノウハウと漁師としての“カン”など、すべての能力を駆使して漁に出るのですが、ダメな時はダメなのです。これと同じように香水の仕事も入念な制作過程を経て新しい香り(商品)を市場に出すのですが、 市場の反応がまったく無い場合があります。又、あったとしても一過性で継続的な実績に結びつかなかったりします。まして、香水などは生活必需品ではなく嗜好品のひとつですから、ハズした時はそりゃあ悲惨なものです。仕方なく処分をするにも可燃性液体である上に香りがついてしまっている分、通常のゴミよりも数段始末が悪いのです。そして、これを繰り返していくと徐々にメシの量が減ってきて、しまいにはメシが食えないという状態になってしまうのです。

 これを避けるには漁師さんと同じように魚を捕り続けなければなりません。沢山の魚を捕るには沢山の餌が必要です。同じように香水も次から次と新しい商品(香り)が市場に投入されてくるのです。どうです、ちょっと見て下さい・・。今、私たちの周りに溢れる香水の群れ(実はほとんどがEDT)、すごいでしょう。この辺の構図は音楽業界などにもオーバーラップしてくるのですが、新しい作品やヒット曲が出ないとCDショップなどは閑古鳥が鳴くことになってしまいます。しかし、CDなどは使用済みでもリサイクル販売などが可能なのでまだ良いほうです。さすがに使用済みの香水ではそうはいきません。香水というものは買った時点で最後まで使い切るという宿命を持った完全消耗品なのです。つまり、リピートされる香り(商品)こそが最も重要になってくるわけです。

 このリピートされる香り(商品)を持つ、あるいは育てる事が出来て初めてメシが食えるようになるわけです。だから漁師さんにとっては良い漁場を見つける事。見つけたとしても魚を根こそぎ捕らない事が鉄則なのです。もし、このコラムを読んでいる方の中で今後、香水のビジネスにたずさわりたいと思う方がおられましたら、この辺の事を理解しておくと良いのではないかと想います。

 今までもそうだったと思いますが、これからは益々、色々なビジネスの分野でも「ビジネスの芸術化」と云ったものが加味され必要とされて来るはずです。完成された香水は一つの芸術でもあります。芸術とは飽きの来ないものです。ゲラン社の「ミツコ」やシャネル社の「No.5」などが80年もの時を超え、今も尚、我々に強烈な印象を訴えかけ、世界市場においても、その確固たる地位を保っているのは、そこに何らかの芸術的エッセンス(感性)が加味されているからではないでしょうか。何故なら、“香水の香り”と云うものは単体香とする以外は自然界に存在し得ないと云う事です。

 そこに存在するのは調香師という香りのイマジネーター達なのです。ある調香師のイマジネイションによって変幻変化する香りのベクトルが導かれていくのです。「調香」とはまさに、芸術活動に他ならないと想われますが実に時間のかかる「作業」でもあります。常にイメージやアイディアが先行し、香りをリードしていきます。それこそ気の遠くなるようなトライ&エラーを繰り返すうち、ある日ふっと「香りが丸くなる」瞬間があります。絶妙なバランスがとれ、エステティックで余分なものなど一切無いピュアな世界・・・。気持ちが一瞬にして凪に変わる・・・。そこまでたどり着くまでにどのくらいの時間を要するのかはその時々次第です。さらにビジネスレベルに至るまでにはボトルデザインからネーミングと云った、さらなる創作活動とプロセスが加えられてきます。プロジェクトによっては2年や3年の時間は悠に費やされて来るのです。

 そういった香りを創造できる調香師は、その才能を高く評価され、「フレグランス・デザイナー」とか、「フレグランス・アーティスト」。又は、「フレグランス・クリエイター」などとして活躍のフィールドを広げていくのです。そして彼らの配合原料や香料。又、レシピなどは現代的香りの分析機、「ガスクロマトグラフィー」などを駆使しても、完璧な再現(コピー)は不可能なのです。理由は二つ、「感性」とは唯一であり、かつ多様であるからです・・。

 現在、「香り」には著作権がありません・・・、「香り」は測る事が出来ないのです。「香り」を表記する数値記号さえも有りません。(香りと臭気は別のものと考えています)では、どうして香るのか?・・・その全貌は未だに神秘のベールに包まれているのです。嗅覚は視覚、聴覚、味覚に比べて科学的解明が遅れています。しかし・・、神秘のベールの向こう側にある特殊性と芸術性がファッション性と融合した時、その「香り」はビジネスの表舞台へと登場してきます。「唯一の感性」が「多様な感性」に評価されるのはそれからです・・・・

丁度今、漁師さんが船を出したところです。
今晩、メシが食えるかどうかは今のところ誰にもわかりません。

※嗅覚を駆使して何かを感じる事を私達は“香覚”と呼んでいます。
 “香覚”とは「香り感覚に目覚める事」を意味します。