大変お待たせ致しましたがコラムvol,3をようやくお届けいたします。ちょっと北京の方へ出稼ぎの打合せに行っておりました関係で遅くなってしまいました。今後は、月2回程の更新を目標に致したいと思っておりますので、これからもよろしくお付き合い下さい。尚、当コラムは独論展開が中心となりますので何らかのオブジェクション等がありましたら是非お聞かせいただければ幸いです。・・それでは本題に入りましょう。
 今回は「香りの包容力と表現力」についてですが・・、そもそも香りに「包容力」や「表現力」なんてあるのか?!・・なんて思う人がいるかも知れませんが、これは人それぞれの香りとの関わり方(香りとの遭遇機会)とか「香水」を使う目的や動機などにも大きく関係してくるのです・・。
 さて、人が生まれて最初に遭遇するのは何でしょう?・・そう、それは、光と空気です。赤ちゃんはお母さんの真っ暗な胎内から眼を閉じたまま、この喧騒なる大気圏へと突入してくるのです。眼は閉じられているのですが、しっかりと光明は感じているのです。音は胎内生活の時から、かすかに楽しんでいるようですが・・。
そして生まれてすぐ大きな声で泣き出します。
 赤ちゃんが一番最初に示すこの“泣く”という行為には何らかの意味があるとの事ですが、この辺のウンチクは別の機会に委ねるとして、この泣いている時の赤ちゃんは相当量の息を吐き出しています。息を吐いているという事は息を吸い込まなければ「呼吸」が成り立ちません。そして、この呼吸は口腔と鼻腔によって行われます。あれほど懸命に泣く赤ちゃんは、すでにこの鼻腔を駆使する時点から「嗅覚の旅」を始めるのです。この時から一生を終えるまで一体どれくらいの匂いや香りに遭遇するのでしょう。それは、その後の後天的環境によって大きく左右されてきますが、まずもって赤ちゃんの最初の食事はミルクです。いわゆる「オッパイ」ということになります。そして、この原体験は一生のものとして刻まれます・・。

 さあ、ここで振り返ってみて下さい・・。あの「オッパイの味や匂い」を思い出せますでしょうか?・・母乳でも粉ミルクでも何でも結構です。どうでしょう、思い浮かぶでしょうか・・。(すぐに思い浮かぶ方は最近もオッパイのお世話になっている方??・・。) そうなんです、実はここに「香りの包容力」のポイントがあります。香りの持つ「包容力」とは一種の「安息感」であり「テリトリー感」から成り立っているのです。端的に云えば、その香りに接すると心や体が無防備になる状態・・、その香り(匂い)の中で解放されている状態です。
 赤ちゃんから見ればママのオッパイは、まさしくママフェロモンそのものであり、ママからみれば赤ちゃんの匂いは赤ちゃんフェロモンそのものなのです。この二人だけのテリトリーはまさに楽園的聖域でもあります。
赤ちゃんの前では、イイ年をした大人も「イナイ、イナイ、バー・・」などと他人の目など気にすることなく出来てしまうのは解放されている事の証です。でも、それを赤ちゃんのいないシチュエーションでやってしまった場合は、・・しばらくの間、多くの白い視線に耐えねばなりません・・。いずれにしても、ここで重要なのは赤ちゃんもママもお互いを解放する匂いを感じているという事です。(ほとんどの動物の子育て中は親子の判断を匂いで行います)

 では、このような関係は単に赤ちゃんとママの間のことなのでしょうか?・・、いいえ、そうではないのです。
赤ちゃんは当然ながら成長して行くわけですが、その成長の過程で様々な匂いや香りに遭遇していきます。
その遭遇過程の中で自分を解放できる香り(匂い)に巡り会うことがあります。又、自分を解放してくれる香り(匂い)を持つ(他)人と巡り会うこともあります。オッパイとママの匂いから始まる香り(匂い)の旅は生涯継続されていくのです・・。と云うことは幾つになっても赤ちゃんとママの関係になれると云うことです。
つまり、「香りの包容力」とは香りの“親和性”を共有することから生まれてくるのです。

 きっと経験のある方もいると思いますが、香水などのプレゼントを選ぶ時などに「自分が選んだ香りを気に入ってくれたらイイな・・」という淡い願望と少しの不安がよぎったりするはずです・・。これは香りの“親和性”を共有できたらイイなあという気持ちの表れです。言い替えれば、「自分の選んだ香りを使うその相手に包まれたい、あるいは包みたい・・という心情が反映されているのです。だから香水のプレゼントはステキなんですね〜。
特に欧米ではこの傾向が強いようです。香りの持つ「包容力」は“下心”さえもスマートにあなたをエスコートしてくれるのです。

 さあ、これからも香水をどんどん使いましょう!・・そうすれば、きっと自分を包んでくれる香りに巡り会えるはず・・、そしてその香りを包みたいと思う人が現れるかも知れません・・。そして、香りには自己の内側へ向かう“親和性”と外側に向かうものと二つの“親和性”があります。その両方が共有できた時に、二人のテリトリー(聖域)は築かれていきます・・。これが「香りの包容力」をさらに強く大きくしていきます。
 しかし・・、一つだけ付け加えておきます・・。この香りの“親和性”による「包容力」というのは色々な環境や遭遇事情などによって変化(進化)することもあるということです・・。より良いものへ、より強いものへ・・という欲求は人間だれしもが抱く煩悩のようなものです。当然、より良い・・、より強いものを求めるのは極自然でもあります。・・この様な場合は“数”へシフトすることも可能です。香りの“親和性”の共有は何も一つとは限りません。多ければ多いほど、その“テリトリー”は広がります。共有を深くするか、あるいは広くするかは自由です。
この辺のことを理解し、体感していくことで「香りの包容力」をコントロールすることさえできてしまうのです。
 今回のもう一つのテーマである「香りの表現力」とは、これらのことをふまえて、香りを“能動的”に使いこなすことでもあるのですが、いかんせん紙面が残り少なくなってきてしまいました・・。
残念ですが、このテーマは次回にさせて頂きたく思います。何卒、ご了承の程、お願い致します。

PS-1.
昔からよくある夫婦の話しで、ダンナさんがふだんしないはずの香水などのカオリをさせながら帰宅すると、奥さんの顔色や声のトーンなどがトタンに変わります・・。これは自分達のテリトリーに他の誰かが侵入して来たという事への“警戒的反応(本能)”でもあるのです。又、車の中などに芳香剤などを置いておいたりする行為も、芳香消臭などの目的もあるのですが、実は自分のテリトリーへの匂い付けのような潜在的行為でもあるのです。まあ、どうせ使うなら芳香剤よりは香水などの方がはるかにイイ(効く)と思うのですが・・。
いずれにしても「香りの包容力」とは良い方向へ向かうとトロけるように心地の良いものですが、反対の方向へ向かうと大変なことにもなるのです。

今回の総括:
1)「イナイ、イナイ、バー・・・」は赤ちゃんの前だけで・・。
2)「包容力」=「芳酔力」であり「芳妖力」でもある。
3)「香りの包容力」を勘違いすると全てを失う事もある・・。

では、また・・・。