今回は前回紙面の都合上、持ち越しとなりました、「香りの表現力」について記して行きたいと思いますのでよろしくお願いします。
 さて、前回のコラムの中に、“親和性”という言葉が結構出てきたのは、覚えておりますでしょうか・・。
その後、何人かの方からこの言葉についてのご質問を頂きました。今回のコラムでもこの“親和性”なるものが非常に重要なキーワードになるのでここで簡単に解説しておこうと思います。“親和性”とは簡単に云えば「馴染む」という意味で、文字通り“馴れ染まる”事です。英語的には「ハーモニー」といった意味合いもありますが、ここでは、対象となる人となりモノなりに心を開くという現象を意味しています・・。という訳で本題の方へ行きたいと思います・・。
 このコラムの中で一番多く出て来る言葉はもちろん「香り」という言葉です・・。では、この「香り」という言葉や意味などを表わす時に色々な表記が使われているのはお気付きになったっでしょうか・・。
「香」「香り」「かおり」「カオリ」「薫り」「薫」「匂い」「匂」「におい」「ニオイ」「臭い」「臭」・・、ただ単純に並べただけでもこれだけの種類があります。また、この並びには独自の表現序列のようなものがあります。A:左側の「香」が香りとの距離が最も近いという事を意味しています。そしてB:中央の「薫」は遠く大きく香る事を意味しています。そしてC:「匂い」は動物的な意味合いが強く、しばしば官能小説などに多用されます。また、D:「臭」はただ臭くて不快なものとして表記されてきます。ひとくちにカオリやニオイと云っても、このように表記する文字によってもその印象はかなり変わってきます。
 さて、今貴方が使用しているフレグランスは前記のA〜Dのうちどれに該当するのでしょうか?・・もちろん、とてつもない“変人”以外、大抵はA〜Cのどれか、又はその組み合わせのどれかに該当するはずです。又、ここで該当してくる意味合いも、自身が求める香りの“親和性”と大きな関わりを持ってきます。さらに具体的に“親和性”をつきつめていくと、・・・ノート(※注1)と云った香調用語が出て来たりして、最終的にはある銘柄の商品にたどりつくわけですが・・、いずれにしても、自身の“親和性”を知って行く事は、香りをコントロールする上で非常に重要です・・。オッと、ここで「香りのコントロール」・・・という言葉が出て来ましたが、「香りのコントロール」とは、香りを“能動的”かつ“手段”として使いこなすという事ですが、前提となるのは「何故、その香りを今日は使うのかという“目的意識”が存在する事と“対象とする相手”(相手は個人でも集団でもかまいません)が存在する事です。つまり、自分以外の対象に対して、自在に香りを駆使できるという事・・。ただ、好きだから使うという次元ではなく、この香りを使ったらこんな反応があるだろう・・という事を想定しながら、対象となる相手の反応を観察、そしてうかがう・・。この試行錯誤が独自の“香りのコントロールノウハウ”を築き上げていくのです。

 さて、ここで少し話しを置き換えてみましょう・・。
日本人の中で一番、香りを使う人とはどんな人達なのでしょう?・・そう、それはまぎれもなく彼女達・・。
夜のお勤めの方達、いわゆるホステスさん達です。筆者は彼女達こそが、日本のフレグランス市場やブランド市場を牽引してきた功労者だと確信しているひとりですが・・、彼女達の香りの使い方は、ひとつのビジネスツールとして見事にコントロールされているのです(全てとは云いませんが・・)。今日のヘアスタイルや衣服などとのバランス・・。お見えになる予定のお客様との“親和性”など・・。その点検、気遣いなどには、香りの仕事をする者として学習となるべき点が多々あります。そして、何よりも夜毎、華として咲くための演出表現の豊かさ・・。
ウ〜ム、
やはり、知って(体得して)いるようです・・。
香りを表現する事、そしてコントロールするという事=官能を揺さぶる事であるという事を・・。
さらに、官能には「精神的官能」と「肉体的官能」の大きな二つが有り、どちらの官能に対しても香りの“親和性”は有効であるという事も・・。 
そして、そこには壮絶な試行錯誤の積み重ねがあったに違いありません。

 では、これから夜の取材?・・に行ってきますので、今回はこの辺で失礼いたします。

PS:古くはクレオパトラとアントニウスの接見時のエピソードに代表される様に、やはり、「香り」については男女の関係抜きには語れないのではないでしょうか。今回のテーマである「香りの表現とコントロール」についても、すでにその原型は、彼方昔の“クレオパトラの薔薇風呂伝説”によって具現化されています。これらの事は、私達の官能構造が変化(進化)しない限り不変の官能原理なのかも知れません。現在でこそ、フレグランス商品はグッと身近なものとなって溢れていますが、その分、しばらくはセンセーショナルなエピソードなども生まれにくくなってきているような気がします。


今回の総括:
(1)試行錯誤の積み重ねは、全てのビジネスに最も大切なもの
(2)“親和性”を感じ取る時は誰でも必ずトキメイているものです

では、また・・・。

注1)香りの調子=香調を一般的には・・・“ノート”という言葉で表現します。
   例)香調経過:トップノート〜ミドルノート〜ラストノート・・・
   香調指向:フローラルノート・グリーンノート・・・