当コラムは今回でようやく8回目になりました。いつも読んで頂いてありがとうございます。何かお気付きの点などありましたら、ご遠慮なくご一報頂きたいと思います。何分にもちょっとスローペースなのが気に掛かりますが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。・・・という訳で今回浮上したテーマは「香りに宿るDNAの創り方」というテーマです。DNAという言葉は、よく耳にするので何となく意味は伝わるかと思いますが、正確には「DNA=デオキシリボ核酸」の意味で、遺伝子本体のことを指す名称でもあります。では、香りに“デオキシリボ核酸”が存在するのかというと、そんなことはあるはずも無く、今回は比喩的に“香りに宿るDNA”と表現してみました。
 そもそも、香水にはそれぞれに開発のコンセプトというものがあって商品化されるわけですが、最近の香水の売り出し方には、いささかその辺のところが、ナイガシロにされているような気もしないでもないのですが、売れなければコンセプトもクソもないというのも確かではあります。日本の香水のマーケット自体は裾野が広がっていて、小学生あたりを対象にした商品なども結構あって、親子二代で同じ香りを使うなんていうことも、そう珍しいことではなくなってきました。中には“ファミリーフレグランス”などというコンセプトの商品なども市場には投入されているくらいです。ファミリーフレグランスとは文字通り「家族の香り」ということで、使用する単位が個人ではなく“家族”という単位にフォーカスしているのです。いわゆる“ウチの香り”ということを提案しているわけですね。今や家族においてのトレンドセッターは子供達といっても過言ではない程、独自の情報を持っていたりします。また、親御さん達も多大な期待と投資?を惜しまないのが世情のようです。
 前述の“家族の香り”ということをちょっと掘り下げて行くと、その家庭の中で代々伝わる伝統的な事柄がいくつかあると思います。例えば家紋であったり、しきたりであったり、○○家の味であったりと、それぞれに様々な事柄があると思いますが、香り(匂い)についてはどうでしょう?・・家庭の中での香りとは、おそらく、お母さんが使っていた化粧品の匂いとか、お父さんが使っていたヘアトニックのにおいとか、お風呂場に漂う石鹸の匂いなどが一般的かと思いますが、実は“家の匂い”というのがあることにお気づきでしょうか。
 最近はアロマテラピーとか、お香やキャンドルやらと、部屋(家)の中の匂いなどには随分気を使うようになってきましたが、その家の持つ匂いというのは確実に存在します。そこに住んでいる人は気付きませんが、それ以外の人には感じる匂いが確実に存在するのです。これは、オフィスなどにも云えることですが、とある事務所にはその事務所の匂いというものがあります。弊社の例で恐縮ですが、弊社は業務上、日常的に香料なるものを扱っているわけですが、当然様々な香りが室内に入り乱れているわけです。事務所を尋ねて来られるお客様からは、「いい香りがしますね・・・」という言葉を再三聞くのですが、常にそこにいる我々にはいったいどのような香りが漂っているのか、皆目見当がつきません。
 また、筆者は地方の出身なので、実家というものがありまして、年に何度か帰郷したりしますが、帰る度にその実家の匂いを感じ取ります。春夏秋冬、季節を問わずに漂う匂いが帰郷を、さらに実感させてくれるというわけです。多分そこに住む家族はその匂いに全く気付いてないはずです。
 このことは香水を使う場合も同じで、自分で使っている香りは自分自身では、中々気付かないものです。良し悪しは別にして、やたらと香り過ぎている人もいれば、ほのかに香る人もいます。そして、いずれその香りはその人のイメージとしてオーバーラップされるようになります。その人なりの香りのDNAが装填される瞬間でもあります。
 女性の後ろを歩くと、時々何とも云えぬ、かぐわしき香りを漂わせている方がいます。一体何の香りなのか?仕事柄、どうしても気になったりしてしまうのですが、多かれ少なかれ同じような経験は、筆者だけではないはずです。また、これとは反対に何ともいえない“生臭いニオイ”を発散しているオッチャン?もいるわけですが、これはもう最悪の事態と云えるでしょう。
 さて、ここで問題です。このオッチャンはどうすればその最悪の事態から抜け出すことができるでしょうか?・・・それは、香りのDNAを組み込むことです。さらに、この香りのDNAは若ければ若いほど、組み込み具合が良いのです。そして、香りのDNAがうまく組み込まれている人は、男女問わずに間違いなく何歳かは若く見られたりします。では、どうやれば、その香りのDNAとやらを組み込めるのでしょうか?ここからが今回のコラムの佳境でもありますが・・。
 まず、香りのDNAの素になるところを改善しなければなりません。これは自分の体を清めることから始めることになります。毎日、必ず朝と晩の二回、お風呂に入ります。シャワーだけではダメです。額や顔にうっすらと汗がにじむ程度の入浴が理想です。無理な場合は足浴等でもかまいませんが、汗が出る程度が肝心です。毎回、石鹸を使って体を洗います。石鹸は自分の好きな香りのものを使います。固形でも乳液状でも、どのタイプでも結構です。同時に歯磨きも忘れずに行いましょう。最悪の事態とは口臭が原因の場合も結構多いのです。これだけを1ケ月続けるだけで、かなり変わるはずです。次にお風呂から上がったら、まだ身体がかすかに温かいうちにオーデコロンやオードトワレを使います。使う場所は柔らかい体の内側部分が良いでしょう。また、使う量は自分の好みで調整して下さい。もし、他の人から「クサイ」などと云われたら、それをひとつの目安に加減して下さい。選ぶ香りは石鹸同様、自分の好みで構いません。(自分の好みで選ぶということが後々の香りのDNA形成に大きく影響してくるのです)慣れないうちは、大変かも知れませんが、途中でやめると元にもどってしまいます。続けてください・・。すると、ある日、それをしないと落ち着かない日がやってきます。その時にはすでに最悪の事態は脱していることでしょう。
 それは何故かと云うと、何とも云えぬかぐわしき女性達は、これに近い事や似たような環境を中学生くらいの時から持っているのです。もう、習慣ですから苦などありません。人の体には、元々それぞれの家の匂いと同じように微妙に違う匂いがあります。体を清める必要性は、この元々の匂いを見出すことにあります。これを徹底的に行った上で使う、オーデコロンやオードトワレの香りは、そのなじみ方と立ち方が全然違います。
 さらには、使用する石鹸やシャンプーなどの香りと相まって、その人独自の「香りの素(DNA)」が形成されていくという具合です。何事も“下ごしらえ”が重要ということです。この“下ごしらえ”を省いて、オードトワレなどを使っても、それはただのマスキングのようなものです。肌に馴染んだものではないので香りの立ち方からして違ってきます。「香りのDNA」とは肌や髪などの匂いと、後付の香りとかが微妙に絡み合って初めて形成されるものです。いわゆる「その人だけの匂い(香り)」ということになります。まあ、云ってみれば人と香粧品とのコラボレーションの結果とも云えるでしょう。
 先述の、「使う石鹸やオードトワレなどはお好みのもので構いません」と云ったのは、自分だけの絡み合った香り(匂い)を創出する為の、ひとつのツールでありテクニックでもあったわけです。上級者になると、この組み合わせを意図的に行ったりするわけで、これを「意図的変異?」と云います。
 さて、どうでしょうか、今回の“香りのDNAの創り方”、うまくお伝えできたでしょうか?今からでも遅くはありません。ご興味をお持ちになった方は是非トライしてみて下さい。
 トンビがタカを、タカがトンビを生むこともある・・・、香りのDNAの世界とはそのようなものですから・・・。
 先日、とある事故で入院している知人のお見舞いに行きました。両足骨折だそうです。もちろん歩くことは出来ません。手術の影響で入浴すら当分無理の状態だそうです。でも何故か、かぐわしき香りがするのです。
 毎日体を拭いているのだそうです。そして、そこにはお気に入りのオードトワレ、そしてイエローフリージアの花がありました。
 きっと、香りのDNAは再生するだろうと思いました。